我ながら素晴らしい発明をした。これは特許を取れるんじゃないかな。あれっ、でも特許を取るにはどうしたら良いんだろう?特許を取るまでの流れがぜんぜんわからない。。

以下では、特許を取るまでの流れ、言い換えれば特許権を取得するまでの流れをわかりやすく説明します。

また、10年以上の特許実務の経験に基づいて、特許権を取得するまでの流れの中の各場面における注意点についてもお伝えします。

1.特許権を取得するまでの流れ

特許権を取得するためには、特許庁に特許出願及び出願審査請求をして審査官の審理を経て特許査定を得ることが必要です。

ざっくりとした特許権を取得するまでの流れは以下のようになります。

特許調査

特許出願

出願審査請求

拒絶理由通知対応

特許査定

以下、上記流れをもう少し詳しく説明して行きます。

2.特許調査

2−1.新規性、進歩性

特許権を取得するためには、発明が、

  • 新規性
  • 進歩性

を有することが必要です。

「新規性」とは新しいこと、「進歩性」とは思い付くのが難しいことです。

明らかに新規性及び進歩性を有しない発明について特許出願しても、審査官に拒絶されてしまいます。

特許出願にかける時間、お金、労力が無駄にならないようにするために、特許調査をしっかりと行うことをおすすめします。

新規性の詳細については、この記事をご参照下さい。

2−2.特許調査の方法

特許調査は、誰でも、特許情報プラットフォームやGoogle検索で行うことができます。

自分の発明に近い技術を探すためのキーワードを適宜選び、その検索結果となる文献、サイトを1つずつ地道に読んでいきましょう。

自分の発明が文献等に載っている場合には、残念ですがその発明には新規性がないと判断される可能性が高いです。

自分の発明がどの文献にも載っていない優れた構成を有している場合には、その発明には進歩性があると判断される可能性があります。

なお、特許文献の読み方については、この記事を参考にしてみて下さい。

新規性及び進歩性の判断に迷ったら、弁理士に相談してみて下さい。

また、特許調査が難しい場合には、弁理士に特許調査を依頼することもできますので検討してみて下さい。

3.特許出願

特許調査により、特許を得ることができる見込みがあることがわかったら、特許庁に特許出願をします。

3−1.特許出願に必要な書類

特許出願をするためには、通常下記の3点の書類を準備する必要があります。

  • 特許請求の範囲
  • 明細書
  • 図面

ざっくり言うと、特許請求の範囲は、発明を定義するための書類です。明細書及び図面は、発明を説明するための書類です。

特許出願の書類作成及び手続きの難しさを考慮すると、弁理士等の代理人にこれらの書類の作成及び特許出願の依頼をすることが一般的です。

なお、弁理士の選び方について、この記事を参照して下さい。

3−2.発明の具体例や変形例をたくさん盛り込みましょう

特許出願の後に、「明細書等には書いてないけれど、実はこの発明はこのような構成でも良かった。」等のいわゆる新規事項を追加する主張は認められません。

このため、発明の具体例や変形例をできる限りたくさん考えて、弁理士に伝えることをおすすめします。

一般に弁理士は、広くて強い権利を取るために、発明を上位概念化して抽象的に書くことに長けています。

発明の具体例や変形例をたくさん伝えると、弁理士は、それらの具体例や変形例を漏れなく明細書に記載し、それらの具体例や変形例を包含する広く明確な言葉で発明を表現するでしょう。

4.出願審査請求

特許出願の日以後に出願審査請求をすると、審査官の審理を受けることができます。

特許出願の日から3年以内に出願審査請求をしないと、特許出願が取り下げられてしまい、特許を受けることができなくなってしまいますので要注意です。

とはいっても、弁理士等の代理人を使って特許出願をしている場合には、多くの場合、代理人が期限管理をしていますので安心して下さい。

代理人から「出願審査請求をしますか?」という問い合わせが来ると思いますので、「出願審査請求をして下さい。」と回答するだけです。

特許出願から時間が経つと、社会情勢が変化しており、「う〜ん。この発明、やっぱり権利化しなくていいかな。」と思うこともしばしばあります。

この場合には、出願審査請求をしなくても大丈夫です。

なお、審査官の審理を早く受けることができる制度である早期審査、スーパー早期審査についてはこの記事を参考にして下さい。

5.拒絶理由通知対応


審査官の審理において拒絶理由が発見された場合には、拒絶理由が通知されます。

出願審査請求をしてから平均で9~10か月位で、拒絶理由又は後述する特許査定が発送されます。

拒絶理由が通知されるというと、初めての方はビックリしてしまうかも知れませんが、拒絶理由が通知されるのはよくあることです。

広い特許権を取得するためのテクニック

広い特許権を取得するために、出願時には特許請求の範囲をあえて広く記載しておき、広すぎるということで審査官から拒絶された場合には、拒絶理由や引用文献を考慮して、特許請求の範囲を適切に限縮補正することが多いためです。

そのまま一発特許査定ということもしばしばあるので、出願時には広い特許請求の範囲でチャレンジしないともったいないですよね。駄目だった場合には、そのとき適切な範囲に減縮しましょう。ということです。

おそらく初めての方は、拒絶理由が通知されてもどのように対応すればよいかわからないと思います。

代理人が付いている場合には、拒絶理由通知と共に代理人が作成したコメントが送られて来ることが多いです。拒絶理由通知及びコメントを参照して、代理人と共に、拒絶理由を解消するための落としどころを探ってみて下さい。

拒絶理由通知に対する応答時は、特許請求の範囲の記載を見直す良いタイミングです。

必須ではない構成で発明が限定されていないかを再検討し、自社やライバル企業の製品等を考慮し、必要であれば、特許請求の範囲を適切に補正するとよいでしょう。

6.特許査定

審査官の審理において拒絶理由が発見されない場合や、拒絶理由を解消することができた場合には、特許査定がされます。

その後、特許料を納付すると、特許権が設定登録されます。これにより、特許権を取得することができます。

以上が、特許権を取得するまでの流れになります。

7.まとめ

このように、特許権を取得するためには、特許庁に特許出願及び出願審査請求をして審査官の審理を経て特許査定を得ることが必要です。

ご参考になりましたら幸いです。