欧州特許出願(EP)において、「発明の単一性を満たしていない」と調査部が判断した場合、クレームに最初に記載された発明について、部分サーチレポート(partial search report, partial supplementary European search report)が発行されます。

以下では、部分サーチレポートが発行された場合の取り得る措置について説明します。

1.追加の調査費用の支払うかどうかを決定

部分サーチレポートに含まれる仮見解には、応答する必要はありませんB-VII, 1.2)。

その代わりに、追加の調査費用を支払うかどうかを決定します。

1−1.追加の調査費用を支払う場合

2ヶ月以内に追加の調査費用を支払うと、追加の調査費用が支払われた発明について最終的なサーチレポートが発行されます(B-VII, 1.2.1(b))。

この最終的なサーチレポートに応答することになります。

なお、追加の調査費用を支払った場合において、発明の単一性の要件を満たしていないとした調査部の判断がおかしいと審査部が判断した場合、この追加の調査費用は払い戻されます(Rule 64(2))。

1−2.追加の調査費用を支払わない場合

追加の調査費用を支払わない場合には、これ上の調査は行われず、部分サーチレポートが最終的なサーチレポートとなります(B-VII, 1.2.1(a))。

しかし、先に述べたように、この部分サーチレポートには、応答する必要はありません。

部分サーチレポートとほぼ同一の内容のサーチレポートが後日発行されるので、そのときに、この部分サーチレポートとほぼ同一の内容のサーチレポートに対して補正を含む応答をすることになります。

調査されなかった発明については、削除をして、必要であれば分割出願をして権利化を図ることになります。

なお、分割出願をすることができる期間については、この記事を参考にして下さい。

2.発明の単一性の要件違反に対して反論できそうかチェック

2−1.発明の単一性の要件違反に対して反論できそうな場合

発明の単一性の要件違反に対して反論できそうな場合には、追加の調査費用を支払い、最終的なサーチレポートを発行してもらい、この最終的なサーチレポートに対する応答時に、発明の単一性の要件を満たす旨の反論をするのがよいのではないかと考えます。

上記の通り、発明の単一性の要件を満たしていないとした調査部の判断がおかしいと審査部が判断した場合、追加の調査費用は払い戻されます

2−2.発明の単一性の要件違反に対して反論できなさそうな場合

追加の調査費用を支払わずに、最終的なサーチレポートを発行してもらい、この最終的なサーチレポートに対する応答時に、調査されなかった発明については、削除をして、必要であれば分割出願をして権利化を図るのがよいのではないかと考えます。

3.結語

以上、部分サーチレポート(partial search report)に対する取り得る措置について説明いたしました。

EPの審査官は厳格なので、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を覆すのは難しいことが多いです。このため、実務上は、追加の調査費用を支払わずに、最終的なサーチレポートを発行してもらい、この最終的なサーチレポートに対する応答時に、調査されなかった発明については、削除をして、必要であれば分割出願をして権利化を図ることが多いのかなと思います。

ご参考になりましたら幸いです。