以下では、実務上重要である、欧州特許出願について分割できる時期について解説いたします。

1.原則、出願が係属中に分割可能

分割出願は、出願が欧州特許庁に係属中に行うことができます(Rule 36(1))。

Rule 36(1)
The applicant may file a divisional application relating to any pending earlier European patent application.

ここで、出願が欧州特許庁に係属しているのは、欧州特許公報が特許の付与について言及する日よりも前までです(A-IV, 1.1.1)。

Guidelines for Examination A-IV, 1.1.1
… An application is pending up to (but not including) the date that the European Patent Bulletin mentions the grant of the patent (OJ EPO 2002, 112). ….

しかし、出願が、最終的に拒絶、取り下げ、取り下げられたとみなされた場合、分割出願を行うことはできません(A-IV, 1.1.1)。

Guidelines for Examination A-IV, 1.1.1
… It is not possible to validly file a divisional application when the parent application has been finally refused, withdrawn or is deemed to be withdrawn (see also the paragraphs below). ….

2.出願が拒絶された場合には、審判の請求期間内に分割可能

なお、出願が拒絶され審判が請求されていない場合には、審判の請求期間の満了まではその出願はRule 36(1)の意味において係属中であり、分割出願はその審判の請求期間の満了まで行うことができます(A-IV, 1.1.1)。

Guidelines for Examination A-IV, 1.1.1
… If an application has been refused and no appeal has (yet) been filed, the application is still pending within the meaning of Rule 36(1) until expiry of the time limit for filing the notice of appeal (Art. 108), and a divisional application can be validly filed until expiry of this period (see G 1/09). ….

3.審判の手続きの進行中は、分割可能

分割出願に関する規定は審判の手続きについても適用されるため、分割出願は審判の手続きの進行中に行うことができます(A-IV, 1.1.1)。

Guidelines for Examination A-IV, 1.1.1
… As the provisions relating to the filing of divisional applications also apply in appeal proceedings (Rule 100(1)), a divisional application may then be filed while such appeal proceedings are under way. ….

なお、欧州特許庁において口頭手続が行われた場合は,決定は、口頭で言い渡すことができます(Rule 111(1))。

このため、審判の手続き中に口頭審理が行われた場合、口頭審理当日の審議の中で、口頭で審判請求の却下の決定が行われ、審判の手続が終了することがあります。

この場合、審査部による出願の拒絶が有効となり、その後、分割出願を行うことができない可能性があります。

このため、審判の手続き中に口頭審理が行われる場合であって、分割出願を行いたい場合には、口頭審理の日前に分割出願をすることをおすすめします

4.まとめ

以上、欧州特許出願について分割できる時期について解説いたしました。

ご参考になりましたら幸いです。

なお、分割と同じく実務上重要であるEPにおいて補正をすることができる時期については、この記事をご参照下さい。