弁理士から「出願予定の特許明細書案を送るので確認して下さい。」と言われたけれど、特許明細書の何を確認すればよいのかよくわからない。
今、忙しくてそれどこじゃない。弁理士が書いた特許明細書だし、きっと問題ないだろうから、さっさとOKの返事をしよう。
このような方が結構いらっしゃるのではないでしょうか。
日々の業務の合間に特許明細書を確認するのは、とても大変ですよね。
以下では、出願予定の特許明細書(明細書、特許請求の範囲、図面)の読み方のコツ及びおすすめの確認のポイントについて説明します。
なお、既に出願され公開された特許文献(公開特許公報)の読み方のコツについては、この記事を参照して下さい。
1.特許明細書の読み方のコツ
本来であれば、明細書、特許請求の範囲及び図面の全てをきちんと読み、内容を確認することが好ましいです。
しかし、限られた時間の中で効率良く確認をするためには、メリハリをつけて読むことが大切だと考えます。すなわち、重要ではない記載については手を抜く代わりに、重要な記載についてはしっかりと読むことが大切だと考えます。
例えば、要約書や、明細書の最初の方に記載されている【背景技術】【課題を解決するための手段】は、それほど重要ではありません。こんなことを言ったら偉い人に怒られるかもしれませんが、【背景技術】【課題を解決するための手段】はスルーしてもOKです。
一方、特許出願予定の明細書、特許請求の範囲及び図面を確認する際に重要な記載は、
- 明細書の【発明を実施するための形態】
- 特許請求の範囲
です。
特許請求の範囲は、発明を定義する権利書となる部分であり、特許出願に関する記載の中で最も重要な記載と言えます。
しかし、特許請求の範囲では、発明が上位概念化されて記載されているため、いきなり特許請求の範囲を読んでも何が書いてあるのかわからないことも多いです。
【発明を実施するための形態】は、このような読みづらい特許請求の範囲をサポートための記載です。発明を実施するための形態には、特許請求の範囲に記載されている発明の具体的な説明が記載されます。
明細書、特許請求の範囲及び図面を読み慣れていない方は、明細書の【発明を実施するための形態】を先に読むことをおすすめします。
2.発明を実施するための形態
2-1.発明の具体例や変形例が漏れなく記載されているか確認
特許出願の後に、「明細書等には書いてないけれど、実はこの発明はこのような構成でも良かった。」等のいわゆる新規事項を追加する主張は認められません。
このため、【発明を実施するための形態】に、発明の具体例や変形例が漏れなく記載されているか確認することをおすすめします。
もし、足りない具体例や変形例があったり、新しい具体例や変形例を思い付いてしまった場合には、弁理士に相談してみましょう。
例えば「実はこの部分はこのような構成でも良いのですが、上手い表現ありませんか?」と提案すると、弁理士は追加しようとする具体例や変形例を上手に表現して明細書、特許請求の範囲及び図面に組み込んでくれるはずです。
なお、追加しようとする具体例や変形例によっては、優先権主張出願や別出願をすることが好ましい場合もあります。弁理士と相談の上どうするか決めるとよいでしょう。
3.特許請求の範囲
3-1.特許請求の範囲に、必須ではない構成要件が含まれていないか確認
特許請求の範囲に、必須ではない構成要件が含まれていないか確認しましょう。
もし、その発明を実施するために必須ではない構成要件が特許請求の範囲に1個でもあれば、第三者は、その必須ではない構成要件を実施しないことで、簡単にその特許請求の範囲から逃れつつ特許発明を適法に実施できてしまいます。
3-2.わからないことがあれば遠慮なく質問
なお、特許請求の範囲には、権利範囲が狭く解釈されないようにするために、特殊な言い回しや表現が含まれていることが多いです。
もし、何でこんな記載になっているんだろう?意図がわからない?という部分があれば弁理士に質問してみて下さい。
特許請求の範囲を日常的に読み書きしている弁理士でも他の弁理士が書いた特許請求の範囲の記載の意図がわからないことはよくありますので、気後れせずに遠慮なく質問してみて下さいね。
4.まとめ
特許明細書の中でも重要な部分である
- 明細書の【発明を実施するための形態】
- 特許請求の範囲
を重点的に読んでいきましょう。
【発明を実施するための形態】を読む際には、発明の具体例や変形例が漏れなく記載されているか確認してみて下さい。
特許請求の範囲を読む際には、必須ではない構成要件が含まれていないか確認してみて下さい。
特許明細書をしっかり確認すると、強い特許権が取れる可能性がグンと高かまります。大変だとは思いますが、きっと将来役に立つと思いますので、頑張って特許明細書を読んでみて下さい。