ソフトウェア関連発明について特許出願をすると、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないとして、方法の発明について、特許法第29条1項柱書違反の拒絶理由が通知されることがあります。
以下、方法の発明について通知された特許法29条1項柱書違反の拒絶理由の解消方法について説明します。
1.主体を追加すれば大体OK
「コンピュータソフトウエア関連発明に係る審査基準」に色々と難しいことが書いてあるのですが、結論としては、各ステップの動作主体を明確にすれば大体OKです。
1-1.具体例
例えば、以下の方法の発明に特許法29条1項柱書違反の拒絶理由が通知されたとします。
入力されたデータを公開鍵で暗号化することで暗号化データを得る暗号ステップと、
前記暗号化データを送信する送信ステップと、
を含む暗号化方法。
この場合、例えば以下のように補正をすることで、特許法29条1項柱書違反の拒絶理由を解消することができます。赤字の部分が補正により追記した部分です。
暗号化部が、入力されたデータを公開鍵で暗号化することで暗号化データを得る暗号ステップと、
送信部が、前記暗号化データを送信する送信ステップと、
を含む暗号化方法。
このように、暗号化部及び送信部というハードウェアが各ステップの処理を行うことを明確にすると、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」と言えるため、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当することになると考えられます。
2.主体がハードウェアであることを明確にすればOK
私の経験上、上記の主体を追加する補正をすれば、95%位の確率で、特許法29条1項柱書違反の拒絶理由を解消することができます。
しかし、稀に、この主体を追加する補正をしても、特許法29条1項柱書違反の拒絶理由を解消することができない場合があります。
審査官によると、その主体(上記の例だと「暗号化部」「送信部」)が必ずしもハードウェアであるとは限らないので、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは言えないため、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないと考えるそうです。
この場合、例えば、主体がハードウェアであることを明確にする補正をすれば、特許法29条1項柱書違反の拒絶理由を解消することができます。
2-1.具体例
上記の具体例の場合だと、例えば、以下のように補正をすることができるのではないでしょうか。赤字の部分が補正により追記した部分です。
暗号化部及び送信部がコンピュータにより実装されるとして、
前記暗号化部が、入力されたデータを公開鍵で暗号化することで暗号化データを得る暗号ステップと、
前記送信部が、前記暗号化データを送信する送信ステップと、
を含む暗号化方法。
なお、主体がハードウェアであることを明確にできれば他の補正でもOKです。
3.結語
以上、方法の発明について通知された特許法29条1項柱書違反の拒絶理由の解消方法について説明いたしました。
ご参考になりましたら幸いです。