特許請求の範囲における「上記」「前記」の意味及び違いについて

2019年10月25日

特許請求の範囲で「上記」「前記」という言葉が出てくることがあります。

以下では、「上記」「前記」の言葉の意味及び違いについて説明します。

1.「上記」「前記」の意味は、基本的には同じ

「上記」「前記」は、「上記」「前記」という記載よりも前のものを指すという点において、同じ意味です。

第一情報を生成する第一情報生成部と、
前記第一情報を用いて第二情報と、前記第二情報に対応する認証情報とを生成する第二情報生成部と、
を含む情報生成装置。

前記第一情報」は、文例の1行目の「第一情報」を指しており、この「第一情報」と同じであることを意味しています。

ちなみに、英語にすると、「上記」「前記」は両方とも「the」又は「said」となります。

2.「前記」の方が好ましいのではないかという説

しかし、「上記」は文字通り、上にあるもののみを指すため、同じ行にあるものを指さないという考え方もあります。この考え方によると、「上記〇〇」と同じ行に「〇〇」がある場合には、「上記〇〇」が指すものないため、「上記〇〇」という記載は不明確ということになります。

第一情報と生成する第一情報生成部と、
上記第一情報を用いて第二情報と、上記第二情報に対応する認証情報とを生成する第二情報生成部と、
を含む情報生成装置。

上記第二情報」は、文例の2行目の「第二情報」を指しています。しかし、「第二情報」は、「上記第二情報」の横にはありますが、「上記第二情報」の上にはありません。このため、「上記第二情報」は、文例の2行目の「第二情報」を指していないと考えることもできます。この考え方によると、「上記第二情報」は、指すものがないため、不明確ということになります。

2-1.「前記」が最近の主流

このため、「上記」ではなく、「前記」の方が好ましいのではないかと言われています。

まぁ、確かにそうですよね。ということで、最近は「前記」が主流のようです。私も原則として「前記」を用いるようにしています。

統計データ

なお、2019年の1月から10月末までに発行された154315個の特許公報において、

「上記」のみを含む【特許請求の範囲】の個数は3995、割合は約2.59%

「前記」のみを含む【特許請求の範囲】の個数は141573、割合は約91.74%

「上記」「前記」の両方を含む【特許請求の範囲】の個数は2223、割合は約1.44%

「上記」「前記」を含まない【特許請求の範囲】の個数は10970、割合は約7.11%

でした。「前記」派が、約9割というこうとで圧倒的多数派です。

3.余談

なお、私は「上記」派でした。それは、私に特許の実務を教えて下さった先生が、「上記」派であったからです。なぜ、その先生が「上記」派であったかというと、手書きで原稿を作成されていた先生曰く、

「上記」と「前記」だと、「上記」の方が書くのが簡単なんですよ。

とのことでした。確かに、手書きだと、「上記」の方が「前記」よりも速く楽に書けますよね。

できる限り早く楽に入力することで単位時間あたりのアウトプットの量を増やすという先生の考えを、キーボード入力にはめてみましょう。

「上記」は、キーボードで入力するのに、「j」「o」「u」「k」「i」と5回のキーを押す必要があります。

「前記」も、キーボードで入力するのに、「z」「e」「n」「k」「i」と5回のキーを押す必要があります。

キーの押す回数は5回で同じですが、「j」がキーボードのホームポジションにあることを考慮すると、キーボード入力においても「上記」の方が入力が楽かもしれません。しかし、その差はわずかです。

上記の「前記」の方が好ましいのではないかという説を考慮すると、主にキーボード入力により明細書を作成する現代においては、「上記」を選ぶメリットはないのかもしれません。

4.結語

以上、「上記」「前記」の言葉の意味及び違いについて説明いたしました。

なお、「各前記〇」「前記各〇」の違いについては、以下の記事を参照してみて下さい。

「各前記〇」「前記各〇」の違いについて

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ご参考になりましたら幸いです。

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