神奈川県平塚市立吉沢小学校6年の守田貫一郎さん(12)が、「洗濯バサミ収納具」で特許権を取得したそうです。
小学校6年生で特許権を取得ってすごいですよね。すごい才能でビックリです。
自宅で洗濯物の取り込みのお手伝いの最中にアイデアを思いつき昨年の夏休みに作ったそうです。発明のきっかけも素敵ですね。お母さん思いの優しい男の子なのでしょう。
ところで、一体どんな特許なのでしょう?
気になったので調べてみました。以下、小学校6年生の守田貫一郎さんの「洗濯バサミ収納具」の特許について、弁理士がわかりやすく解説いたします。
1.経過情報
守田さんの発明「洗たくバサミまとめるくん」は、2018年10月18日(木)から20日(土)に開催された平塚市児童生徒創意くふう展で、小学校の部平塚市長賞を受賞しました。
その後、「洗たくバサミまとめるくん」改め「洗濯バサミ収納具」について、新規性喪失の例外規定の適用を受けて2019年3月29日に特許出願が行われました。そして、2019年9月18日に一発特許査定となっています。
その後、特許料が納付され、特許権の設定登録が行われ、特許公報(特許第6614690号)が発行されています。
なお、特許出願から約6か月で特許査定ということで、通常よりも審査が早く行われています。これは、早期審査の申請があったためです。早期審査が認められるとこんなに早く特許を得ることができるんですね。早期審査の詳細についてはこちらの記事を参照して下さい。
「あれ?小学校6年生(未成年者)でも特許取れるの?」と思った方がいらっしゃるかもしれませんが、未成年者であっても特許を取ることはできます。ただし、未成年者は、法定代理人によらなければ、手続をすることができません(特7条1項)。このため、今回の特許出願では、守田貫一郎さん(12)のおそらくお母さんと思われる方が法定代理人となっています。
2.発明が解決しようとする課題
まずは、発明が解決しようとする課題を見てみましょう。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、簡単な構造を有していながら、簡単な操作で、複数の洗濯バサミを一方向に揃え、しかも積み重ねて収納することができ、さらに洗濯バサミを簡単に取り出すことのできる洗濯バサミ収納具を提供することである。
この発明によると、簡単な操作で、複数の洗濯バサミを一方向に揃え、しかも積み重ねて収納することができ、さらに洗濯バサミを簡単に取り出すことができるそうです。
どのようにして、「複数の洗濯バサミを一方向に揃え」るのかが気になるところです。
3.課題を解決するための手段
課題を解決するための手段の欄の記載ではないのですが、図1及び図7と、段落【0011】及び【0012】にわかりやすくまとまった記載があります。
以下に、前記特許公報から図1及び図7を引用します。この図面を見ながら、以下の説明を順に読んでみて下さい。この説明は、段落【0011】及び【0012】を私が要約したものです。
- 洗濯バサミ5の穴に、中心軸体3を挿通する
- 洗濯バサミ5が落下
- 落下する洗濯バサミ5が落下姿勢規制部34の傾斜端面38にぶつかると、洗濯バサミ5の向きが一方向に揃えられ、積み重なる
- 洗濯バサミ5を取り出すときは、洗濯バサミ5を摘まんで引っ張るだけ
落下する洗濯バサミ5の向き一方向に揃える落下姿勢規制部34が発明のポイントですね。ピタゴラスイッチを彷彿させる素晴らしい発明です。
なお、段落【0011】及び【0012】の原文は以下の通りです。
【0011】
この発明においては、支点部と作用点部との間に形成された空間に中心軸体を挿通させるように、洗濯バサミを中心軸体に装着すると、洗濯バサミは自重によって中心軸体の上から下へと落下して行く。そのとき、落下姿勢規制部によって、中心軸体に沿って落下して行く洗濯バサミは、中心軸体を中心にして回動することがあっても回転することなく落下して行く。洗濯バサミは、落下姿勢規制部によって、開口部に力点部が向かうように落下して行き、最終落下地点では、開口部から力点部が露出するように洗濯バサミが配置される。複数の洗濯バサミを中心軸体の上から下へと落下させると、最下位にある洗濯バサミの上に複数の洗濯バサミが積み重なった状態となる。その結果、この洗濯バサミ収納具は複数の洗濯バサミを積み重ねた状態で複数の洗濯バサミを収納することができる。
【0012】
そして、洗濯バサミを取り出すときは、開口部に露出する洗濯バサミの力点部を摘まんで力を入れることにより作用点部を離反させ、作用点部が離反した状態で洗濯バサミを引き出し、取り出し部から洗濯バサミを引き出すことによりこの洗濯バサミ収納具から洗濯バサミを取り出すことができる。
4.特許請求の範囲
気になる特許請求の範囲の記載は、以下の通りです。
特許請求の範囲の記載は発明が上位概念化されて記載されていているため、慣れていない方には非常に読みづらいです。もし、読んでもわからない場合には、ざっと眺めて特許の雰囲気だけ楽しんで下さい。
【請求項1】
基台と、中心軸体と、落下姿勢規制部と、中心軸体に挿通された洗濯バサミを取り出す
開口部を備えた取り出し部とを有し、
(a)前記中心軸体が基台の平面に対して縦方向に設けられ、
(b)前記落下姿勢規制部が、洗濯バサミの力点部に力を加えると支点部を中心にして作用点部が互いに離反するように回動するその洗濯バサミにおける前記作用点部と前記支点部との間に形成される洗濯バサミの空間部に前記中心軸体の上部が挿通する状態になるように中心軸体に洗濯バサミを装着した場合に、中心軸体の上部から基台の平面に向かって洗濯バサミが落下するときに、前記洗濯バサミの前記力点部となる部位が前記開口部に向かうように洗濯バサミの落下姿勢を規制することを特徴とする洗濯バサミ収納具。
【請求項2】
前記落下姿勢規制部が、前記中心軸体に挿通された洗濯バサミが中心軸体を中心にして回転するのを阻止する内壁面を備えた壁体である前記請求項1に記載の洗濯バサミ収納具。
【請求項3】
前記落下姿勢規制部が、前記中心軸体を挿通して基台上で上下に積み重なった複数の洗濯バサミが同じ方向に向いて重なるように形成された壁体である前記請求項1又は2に記載の洗濯バサミ収納具。
【請求項4】
前記落下姿勢規制部は、その上端面が、前記開口部における開口方向に向かって傾斜する傾斜端面である前記請求項1~3のいずれか一項に記載の洗濯バサミ収納具。
個人的には、「洗濯バサミの穴」が、特許請求の範囲の記載として相応しいように、「洗濯バサミの力点部に力を加えると支点部を中心にして作用点部が互いに離反するように回動するその洗濯バサミにおける前記作用点部と前記支点部との間に形成される洗濯バサミの空間部」ときっちりと書き込まれていて素敵だなと思います。
5.結語
以上、守田貫一郎さん(12)の「洗濯バサミ収納具」について解説いたしました。
守田さんには、これからも素晴らしい発明をして世の中を便利にして頂ければ幸いです。
もし、今回の守田さんのニュースに刺激を受けて私も特許を取りたい!という方がいらっしゃれば、無料で特許相談をしておりますので遠慮なくご連絡下さい。