特許の打ち合わせで、優先権という言葉ができたけれど、
- 優先権って何ですか?
- パリ優先権と国内優先権ってどう違うの?
という疑問をお持ちの方が多いのではないでしょうか?
以下、優先権(パリ優先権、国内優先権)について説明いたします。
この記事を読めば、優先権(パリ優先権、国内優先権)のことがすっきりとわかります。
1.パリ優先権
1-1.パリ優先権は、国内出願→外国出願
パリ優先権は、国内出願に基づいて外国出願をするとき使います。
国内出願を基礎とするパリ優先権を主張して外国出願をしたとします。
このとき、外国出願では、国内出願の出願日に出願されたのと同様の利益を得ることができます。
具体的には、外国出願の審査において、新規性及び進歩性等の特許要件は、国内出願の出願日を基準に判断されます。
1-2.パリ優先権を主張しない場合
パリ優先権を主張しない場合には、外国出願の審査において、新規性及び進歩性等の特許要件は、外国出願の出願日を基準に判断されます。
このため、国内出願の出願日と外国出願の出願日との間に発明を公開した場合には、外国出願の出願日の時点で、その発明の新規性は失われているため、特許を受けることはできません。
パリ優先権を主張しないメリットはないため、国内出願に基づく外国出願をする場合にはほぼ100%パリ優先権を主張します。外国出願をするときのおまじないと思ってもらってOKです。
2.国内優先権
2-1.国内優先権は、国内出願→国内出願
国内優先権は、国内出願に基づいて、発明の内容を補充した国内出願をするときに使います。
国内出願1に基づく国内優先権を主張して国内出願2をしたとします。
国内優先権により得られるメリットは、パリ優先権により得られるメリットとほぼ同じです。国内出願2は、国内出願1の出願日に出願されたのと同様の利益を得ることができます。
具体的には、国内出願2の審査において、新規性及び進歩性等の特許要件は、国内出願1の出願日を基準に判断されます。
より詳細には、国内出願1に記載されている発明は、国内出願1の出願日を基準に審査されます。一方、国内出願2のみに記載されている発明は、国内出願2の出願日を基準に審査されます。
2-2.改良発明を漏れのない形で保護
発明Aについて国内出願1をした後に、より優れた発明(改良発明A’)を思いつくことがよくあります。
このとき、改良発明A’について別途特許出願をすると、先の特許出願の発明Aと同一であるという理由(特39条1項違反)で拒絶される可能性があります。
特39条1項違反で拒絶されない可能性が大のときには、国内優先権を主張せずに、改良発明について別途特許出願をしてもOKです。
この場合には、国内出願1に基づく国内優先権を主張して、改良発明A’の内容を補充した国内出願2をすることで、改良発明A’について特許による保護を図ることができます。
「あっ!この前の特許出願の明細書には書いていないけれど、こんな実施形態があった。この実施形態についても権利化したい。」という場合には、国内優先権の主張出願を考えてみて下さい。
国内出願1は国内出願1の出願の日から1年4月を経過した時に取り下げられてしまいます。しかし、国内出願1に記載されている発明は、国内出願2において権利化を図ることができますので問題ありません。
3.まとめ
以上、優先権(パリ優先権、国内優先権)について説明いたしました。
パリ優先権、国内優先権は、共に優先権であり、先の出願日に出願されたのと同様の利益を得ることができる権利であるという点において同じです。
一方、
- パリ優先権は、国内出願→外国出願
- 国内優先権は、国内出願→国内出願
という場面で使われるという点で異なります。
ご参考になりましたら幸いです。