ブランド物のアクセサリーってなんでこんなに高いんだろう?
アクセサリーのパーツ自体はネットや貴和製作所等で手に入るし、私もがんばれば作れそうなのに。
あれ?!ていうか、同じようなアクセサリーを作って、メルカリ、ラクマ等で、本物よりも安い価格で売れば儲かるんじゃないかな?
何となく悪い行為な気もするけれど、個人的にお小遣いを稼ぐ程度のことだし、同じようなことをしている人もたくさんいるし、きっと大丈夫でしょ。
このような方、いらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、ブランド物のアクセサリーのコピー商品を手作りして販売すると、最悪の場合、著作権、意匠権、商標権等の知的財産権を侵害している、不正競争行為に該当するとして、警告書が届いたり、訴えられたりすることがあります。
以下では、ハンドメイドアクセサリーを作って販売する方に知っておいて頂きたい知的財産権及び不正競争防止法の知識について説明します。また、警告書が届いた場合の対応について説明します。
1.アクセサリーに関する知的財産権
アクセサリーに関する知的財産権は、著作権、意匠権、商標権の3種類です。
1-1.アクセサリーの著作権
一般に、アクセサリーのデザインは、著作物ではないと考えられており、著作権法で保護されていません。しかし、以下の何れかの場合には、アクセサリーは、著作物として著作権法で例外的に保護されます。
- 一品制作の美的創作性を備えた工芸品である場合
- 純粋美術と同視しうる創作性を有する場合
例えば、そのアクセサリーが、一品制作物である場合には、「一品制作の美的創作性を備えた工芸品」に該当するため、著作権法により保護される可能性があります。
また、例えば、アクセサリーが、著名デザイナーによりデザインされたものであり、高度な創作性を有する場合には、「純粋美術と同視しうる創作性を有する」ため、著作権法により保護される可能性があります。
これらの場合に、著作物であるアクセサリーのデザインを真似たアクセサリーを作製すると、著作権の侵害であるとして損害賠償請求、差止請求を受ける可能性があります。
1-2.アクセサリーの意匠権
アクセサリーは、意匠法の保護の対象となっており、アクセサリーについて意匠登録がされている場合があります。
この場合、その登録意匠と同一・類似の意匠を業として実施すると、意匠権の侵害であるとして損害賠償請求、差止請求を受ける可能性があります。
なお、アクセサリーについて意匠登録をするためには、特許庁に意匠登録出願をして、審査官の審査を経て、登録査定を受けることが必要です。
1-3.アクセサリーの商標権
アクセサリーが他人の登録商標を含む場合には、そのアクセサリーを作製すると、商標権の侵害であるとして損害賠償請求、差止請求を受ける可能性があります。
例えば、アクセサリーについて、立体商標の商標登録がされている場合には、その立体商標と同一・類似の商標を使用すると、商標権の侵害であるとして損害賠償請求、差止請求を受ける可能性があります。
立体商標の登録商標の例
第6125506号
株式会社TASAKI
次に、アクセサリーに関する不正競争行為について説明します。
2.アクセサリーに関する不正競争行為
アクセサリーに関する不正競争行為は、不正競争防止法第2条1項1号から3号の不正競争行為です。不正競争に該当する行為を行うと、損害賠償請求、差止請求を受けることがあります。
以下、不正競争防止法第2条1項1号から3号の不正競争行為について説明します。
2-1.不正競争防止法第2条1項1号の不正競争行為
不正競争防止法第2条1項1号では、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡等して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為が、不正競争に該当すると規定されています。
すなわち、以下の(1)から(4)の全ての要件を満たす場合には、不正競争防止法第2条1項1号の不正競争行為に該当します。
- (1)アクセサリーのデザインが、商品等表示であること
- (2)そのデザインが、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されていること
- (3)他人の商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用等すること
- (4)他人の商品又は営業と混同が生じること
例えば、「このアクセサリーのデザインと言えば、○○のブランドでしょ!」というように、あるアクセサリーのデザインが他人の「商品又は営業を表示するもの」として周知になっているとします。すなわち、上記(1)及び(2)の要件が満たされているとします。
この場合、そのアクセサリーのデザインと同一・類似のデザインのアクセサリーを作製して、その結果、他人の商品又は営業と混同が生じた場合には、上記(3)及び(4)の要件を満たすため、不正競争防止法第2条1項1号の不正競争行為に該当します。
不正競争防止法第2条1項1号では、「混同」が要件になっています。
2-2.不正競争防止法第2条1項2号の不正競争行為
不正競争防止法第2条1項1号では、他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡等をする行為が、不正競争に該当すると規定されています。
すなわち、以下の(1)から(3)の全ての要件を満たす場合には、不正競争防止法第2条1項2号の不正競争行為に該当します。
- (1)アクセサリーのデザインが、商品等表示であること
- (2)そのデザインが、他人の商品等表示として著名であること
- (3)他人の商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用等すること
不正競争防止法第2条1項2号では、「混同」が要件になっていません。その代わりに、「周知」よりもハードルが高い「著名」が要件になっています。
不正競争防止法第2条1項2号によると、商品等表示が著名な場合には、混同が生じていなくても、不正競争行為に該当します。
2-3.不正競争防止法第2条1項3号の不正競争行為
不正競争防止法第2条1項3号では、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為が、不正競争に該当すると規定されています。
ただし、そのような行為であっても、日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品を模倣した商品を譲渡する行為は、不正競争に該当しないと規定されています(不正競争防止法第19条1項5号)。
つまり、最初の販売から3年を経過していない他人のアクセサリーのコピー商品を販売する行為は、不正競争防止法第2条1項3号の不正競争行為に該当します。
これに対して、最初の販売から3年を経過した他人のアクセサリーのコピー商品を販売する行為は、不正競争防止法第2条1項3号の不正競争行為に該当しません。
3.警告書が届いた場合の対応について
警告書が届くと、びっくりしてしまいますよね。とりあえず、深呼吸をして、心を落ち着かせましょう。
3-1.知的財産権の侵害、不正競争行為に該当するかどうかの確認
まずは、自分の行為が、相手方の知的財産権を侵害するか、不正競争行為に該当するかを確認します。
自分の行為が、相手方の知的財産権を侵害するか、不正競争行為に該当するかによって、今後の取り得る対応が大きく異なります。このため、この確認は、慎重に行う必要があります。
しかし、この確認を正確に行うためには、専門的な知見が必要なことも多いです。もし、自分の行為が、相手方の知的財産権を侵害するか、不正競争行為に該当するかの判断に迷う場合には、弁理士、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
3-1-1.著作権の侵害の確認
相手方が著作権の侵害を主張している場合には、相手方の著作物が、「一品制作の美的創作性を備えた工芸品」に該当するか、「純粋美術と同視しうる創作性を有する」かを確認しましょう。
相手方の著作物が、「一品制作の美的創作性を備えた工芸品」に該当せず、かつ、「純粋美術と同視しうる創作性を有」しない場合には、その著作物は著作権法により保護されないため、著作権の侵害に該当しないことがあります。
3-1-2.意匠権、商標権の侵害の確認
特に、意匠権、商標権は、特許庁の登録原簿に登録されています。特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)で、意匠権、商標権が存続しているか確認しましょう。
意匠権、商標権が存続している場合には、自分の商品が、相手方の登録意匠と同一・類似であるかを確認しましょう。
また、自分の商品が、(1)相手方の登録商標と同一・類似の商標を使用しているか、(2)相手方の指定商品・役務と同一であるかを確認しましょう。
自分の商品が、相手方の登録意匠と同一・類似でない場合、相手方の登録商標と同一・類似の商標を使用していない場合には、意匠権、商標権の侵害に該当しません。
3-1-3.不正競争行為に該当するかの確認
自分の行為が、不正競争防止法第2条1項1号から3号の不正競争行為に該当するかを確認しましょう。
不正競争防止法第2条1項1号、2号の不正競争行為に関しては、まずは、相手方の商品等表示が何であるのかを確認しましょう。そして、相手方の商品等表示が周知、著名であるか、自分の商品が、相手方の商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用しているのかを確認しましょう。
相手方の商品等表示が、周知、著名ではなく、自分の商品が、相手方の商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用していない場合には、不正競争防止法第2条1項1号、2号の不正競争行為に該当しません。
不正競争防止法第2条1項3号の不正競争行為に関しては、相手方の商品が、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過しているかどうかを確認しましょう。3年を経過している場合には、不正競争防止法第2条1項3号の不正競争行為に該当しません。
3-2.知的財産権の侵害、不正競争行為に該当する可能性が高い場合
この場合には、知的財産権の侵害、不正競争行為に該当する可能性が高い商品の販売等を中止しましょう。
そして、商品の販売等を中止した旨の連絡を相手方にします。相手方が、和解金の支払いを求めている場合には、その和解金の額について交渉することになります。
3-3.知的財産権の侵害、不正競争行為に該当するかはっきりせずグレーの場合
この場合には、知的財産権の侵害、不正競争行為に該当しないと考えるということを相手方に連絡します。そして、相手方と交渉して、お互いの妥協点を見つけることになります。
例えば、相手からの要求がある場合には、要求の一部は受け入れるが、要求の他の部分は受け入れることはできないといったように応答します。
3-4.知的財産権の侵害、不正競争行為に該当する可能性が低い場合
この場合にも、知的財産権の侵害、不正競争行為に該当しないと考えることを相手方に連絡します。
相手方から要求があるときには、「3-3.知的財産権の侵害、不正競争行為に該当するかはっきりせずグレーの場合」よりも、強気で対応します。
3-5.返答期限について
警告書では、相手方から応答期限が設定されていることが多いです。しかし、応答期限は短めに設定されていることも多く、設定された応答期限内に応答することが難しいこともあります。
この場合には、設定された応答期限以内に応答することはできないと相手方に伝えて、応答期限を延ばすこともできます。
3-6.応答しないという選択
「警告書に応答しないとダメですか?警告書に応答しないとどうなるのでしょうか?」という質問をよく受けます。
警告書に対する応答の義務はないので、応答しなくてもよいです。しかし、応答しない場合には、訴訟を起こされるリスクが上がります。
訴訟が提起されると、警告書に対する応答とは比べ物にならないくらい時間的金銭的な負担がかかります。
「相手方も訴訟は大変なので避けたいはずなので、訴訟を提起することはないだろう。警告書を無視していれば、そのうち相手方はあきらめるだろう。」という考え方もあります。
しかし、個人的には、訴訟リスクを避けるために、警告書に対してきちんと応答することをお勧めします。
3-7.困ったら弁理士、弁護士等の専門家に相談
上記に説明したように、知的財産権の侵害、不正競争行為に該当するかどうかの確認を正確に行うためには、専門的な知見が必要です。
また、下手な応答をすると、不利益を被ることもあります。さらに、警告書に対する応答では、上記以外にも検討すべきことが多々あり、ケースバイケースな側面もあります。慣れていない方が、警告書に適切に対応するのは難しいかも知れません。
このため、警告書に対する応答が難しいなと思ったら、弁理士、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
4.まとめ
以上、アクセサリーに関する知的財産権、不正競争行為、警告書対応について説明いたしました。
ご参考になりましたら幸いです。
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