以下、実務上大切である、欧州特許出願(EP)において補正をすることができる時期について解説します。

1.原則、サーチレポートを受け取る前は補正できない

サーチレポートを受け取る前は、別段の定めがある場合を除き、補正を行うことはできません(Rule 137(1))。

Rule 137(1)
Before receiving the European search report, the applicant may not amend the description, claims or drawings of a European patent application unless otherwise provided.

なお、PCTで国際特許出願をした場合には、国際段階でPCT19条補正等を行うことや、欧州への移行時に補正を行うことができます(Rule 159(1)(b), H-II, 2.1)

Guidelines for Examination H-II, 2.1
In the case of a Euro-PCT application requiring a supplementary European search according to Art. 153(7), the applicant may amend the originally filed claims, description and/or drawings before the application is subject to the supplementary search either by maintaining amendments filed in the international phase under Art. 19 PCT and/or Art. 34(2)(b) PCT or by filing amendments on and/or after entry into the European phase under Rule 159(1)(b) and/or Rule 161(2) respectively (see also E‑IX, 3, and B‑III, 3.3.2).

2.サーチレポート等に対する応答時に補正可能

サーチレポート等に対する応答時に、出願人は自発的に補正を行うことができます(Rule 137(2))。

Rule 137(2)
Together with any comments, corrections or amendments made in response to communications by the European Patent Office under Rule 70a, paragraph 1 or 2, or Rule 161, paragraph 1, the applicant may amend the description, claims and drawings of his own volition.

3.その後の補正は審査部の裁量となっているが、比較的自由に補正可能

更なる補正は、審査部による同意がない限り行うことができません(Rule 137(3))。

Rule 137(3)
No further amendment may be made without the consent of the Examining Division.

このため、サーチレポート等に対する応答期間の経過後は、自由に補正をすることができないとも一見考えられますが、そんなことはありません。

補正が先の通知に応じて欠陥を是正するものである場合には、その補正は、新たな欠陥を生じさせない限り、常に認められます(H-II, 2.3)。

Guidelines for Examination H-II, 2.3
… If amendments clearly remedy a deficiency in response to the preceding communication, they are always admitted, provided they do not give rise to some new deficiency. ….

また、既に特許可能と見なされているクレームを制限する補正は、通常認められます(H-II, 2.3)。

Guidelines for Examination H-II, 2.3
… On the other hand, amendments limiting a claim which is already considered allowable are normally admitted. ….

ということで、拒絶理由を解消できる補正であれば、サーチレポート等に対する応答期間の経過後であっても、比較的自由に行うことが可能です。

EPにおいても、日本やアメリカにおける通常のOAに対する応答と同様に、拒絶理由が通知された場合にはその応答期間内に補正をすることができると考えてもらって大丈夫です。

同様に、クレームの補正の根拠を求めるRule 137(4)の通知があった場合も、拒絶理由を解消できる補正であれば、その応答期間内に行うことができると考えてもらって大丈夫です。

4.口頭審理においては、口頭審理召喚通知で指定された期間内に、複数の補正書を提出することが好ましい

口頭審理においても、「更なる補正は、審査部による同意がない限り行うことができない。」というRule 137(3)が適用されます。

通常、口頭審理召喚通知で指定された期間内に補正を行うことができます。

口頭審理召喚通知で指定された期間以降に行う補正は、”late-filed”と扱われることがあります。

Guidelines for Examination H-II, 2.7
Late-filed requests after summons to oral proceedings in examination
If requests are filed after the final date set in accordance with Rule 116(2), they are usually treated as late-filed, unless a summons to oral proceedings was issued as the first action of the examining division. ….

“late-filed”の補正は、明らかに許可することができるものである場合のみ、認められます。

Guidelines for Examination H-II, 2.7.1
… These late-filed claims will only be admitted into the proceedings if they are clearly allowable. This means that it must be immediately apparent to the examining division that the amendments successfully overcome the objections without giving rise to new ones (prima facie assessment). ….

許可できることが明らかでない場合には、”late-filed”の補正は認められません。

口頭審理召喚通知で指定された期間以降に行う補正は、許可できることが明らかではないという理由で、認められないこと多いです。

なお、EPでは、複数の補正書(main request, auxiliary requests)を提出することができます。

このため、口頭審理においては、口頭審理召喚通知で指定された期間内に、口頭審理で行い得る複数の補正にそれぞれ対応した複数の補正書を提出することをおすすめします。

5.結語

以上、欧州特許出願において補正をすることができる時期について解説いたしました。

ご参考になりましたら幸いです。

なお、補正と同じく実務上重要であるEPにおいて補正をすることができる時期については、この記事をご参照下さい。