*上記の画像及びアイキャッチ画像は公式ホームページから引用
流行に疎い私ですが、そんな私でもちょくちょく噂を聞く一人焼肉推奨店「焼肉ライク」。
このコロナ禍にも関わらず、いつも混んでいるし、どんな店なんでしょう??
気になってホームページを見たら、特許出願中!と特許出願を全面的にアピールしているのを発見。
どんな特許出願なのか気になる!
ということで、どんな特許出願なのか調べてみました。また、実際にお店にも行ってきました。
以下、焼肉ライクの特許出願について説明します。
なお、2021年5月21日現在2件の特許出願(特願2018-227265、特願2018-243193)が公開されています。そのうち一件の特許出願(特願2018-227265)を中心に説明します。
以下、公開特許公報から記載や図を適宜引用します。これらの特許出願の詳細はこちらとこちらを参照して下さい。
1.経過情報
出願日:2018年12月4日
出願番号:特願2018-227265
公開日:2020年6月11日
公開番号:特開2020-89470
2021年5月21日の時点では、出願審査請求は行われておらず、この特許出願についての審査は行われていないようです。
2.発明が解決しようとする課題
まずは、発明が解決しようとする課題からみていきましょう。
【0004】
焼肉店など、飲食店によっては、お客が、テーブル上の調理器具を利用して自ら調理することがある。このような飲食店のテーブルでは、卓上スペースが限られていることが多い。このため、店員又はお客からすると、トレイをテーブルのどこに置けばよいかがわかると便利である。また、その際、トレイを安定しておけると便利である。
たしかに、トレイや器を置く正しい位置がわからず、気持ち悪かったことがあります。
【0005】
本発明は、トレイを置くべき場所が容易にわかり、かつ、トレイを安定して置くことができるテーブル及びこれに用いるトレイ提供することを目的とする。
そこで、本発明は、
- トレイを置くべき場所が容易にわかり、かつ、
- トレイを安定して置くことができる
テーブル及びこれに用いるトレイを提供することを目的としています。
3.課題を解決するための手段
それでは、どのようにしてこの課題を解決したのでしょうか。
【0006】
本発明の一態様に係るテーブルは、トレイ載置用凹部が形成されたテーブル板を有するものである。
以下に引用する図2の40が指すものが、トレイ載置用凹部です。
【0007】
この態様によれば、トレイを置くための場所があらかじめテーブル板に凹部として形成されているので、トレイをテーブルに置く者が、トレイをテーブルのどこに置くべきかが容易にわかるようになる。また、その場所が凹部となっているため、そこにトレイを入れる又は嵌めることが可能となるため、トレイを安定して置くことができる。
トレイ載置用凹部40があると、
- トレイをテーブルのどこに置くべきかが容易にわかるようになり
- トレイを安定して置くことができる
という効果があるとのことです。
これだけかよ!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この特許出願には他にも色々なアイデアが散りばめられています。
例えば、【0021】には、トレイ載置用凹部40の前側の一辺51を前方に開放させることで、トレイ100をトレイ載置用凹部40に入れやすくて、置きやすくするというアイデアが記載されています。
【0021】
また、トレイ載置用凹部40は、トレイ100を載置した場合に、トレイ100を引出し可能に構成されている。この構成により、トレイ100の取り外しが容易となる。とりわけ、トレイ100の引出し方向が前方であるため、食べ終わって席を立ったお客のところから、トレイ100を取り外し易くなるなど、トレイ100の取り扱いが容易となる。また、このような引き出し可能な構成について、トレイ載置用凹部40の前側の一辺51をテーブル板30の前縁30aの一部に沿って形成し、トレイ載置用凹部40の前側の一辺51を前方に開放させる、という簡易な構造で達成している。また、このような開放部分が前部にあることで、トレイ100をトレイ載置用凹部40に入れやすくて、置きやすくなる。
また、 【0022】には、トレイ載置用凹部40を金属板とすることで、トレイ100の出し入れの繰り返しによるトレイ載置用凹部40の損傷を防ぐというというアイデアが記載されれいます。
【0022】
さらに、トレイ載置用凹部40は、金属板によって構成されている。この構成により、木で構成する場合に比べて、トレイ100の出し入れの繰り返しによるトレイ載置用凹部40の損傷を抑制することができる。
このように、「トレイを置く場所をわかりやすくし、トレイを安定して置くためにトレイ載置用凹部40を設ける」という本発明のメインとなるアイデアを実現する際にあったらよい工夫を考えて明細書に記載しておくと、進歩性が認められやすくなります。
4.特許請求の範囲の記載
気になる特許請求の範囲の記載は、以下の通りです。特許請求の範囲の記載は抽象的で読みずらいため、慣れていない方は眺める程度にしておきましょう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ載置用凹部が形成されたテーブル板を有する、テーブル。
【請求項2】
前記トレイ載置用凹部は、トレイを載置した場合に、当該トレイを引出し可能に構成されている、請求項1に記載のテーブル。
【請求項3】
前記トレイの引出し方向は、水平方向である、請求項2に記載のテーブル。
【請求項4】
前記トレイ載置用凹部の一部は、前記テーブル板の縁の一部に沿って形成されることで、前記トレイの引出し方向に開放されている、請求項2又は3に記載のテーブル。
【請求項5】
前記トレイ載置用凹部は、金属板によって構成されている、請求項2から4のいずれか一項に記載のテーブル。
【請求項6】
前記トレイ載置用凹部の高さは、トレイを載置した場合に、当該トレイが前記テーブル板の上面を超えない高さに設定されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のテーブル。
【請求項7】
前記トレイ載置用凹部の高さは、トレイを載置した場合に、前記テーブル板の上面に隣接する当該トレイの上面が当該テーブル板の上面と面一となる高さに設定されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のテーブル。
【請求項8】
前記テーブル板には、食物を調理するために使用される調理領域が設けられており、
前記トレイ載置用凹部と前記調理領域とは、一方向に連続して並んでいる、請求項1から7のいずれか一項に記載のテーブル。
【請求項9】
前記テーブル板には、前記トレイ載置用凹部及び前記調理領域を含む組合せが複数設けられており、
前記複数の組合せは、前記一方向と交差する方向に配列されている、請求項8に記載のテーブル。
【請求項10】
前記テーブル板には、前記複数の組合せの間に調味料用凹部が形成されている、請求項9に記載のテーブル。
【請求項11】
前記テーブル板には、調味料用凹部が形成されており、
前記調味料用凹部は、前記トレイ載置用凹部と前記調理領域とが並んでいる方向から外れた位置に形成されている、請求項8又は9に記載のテーブル。
【請求項12】
前記調理領域には、ロースターが設けられている、請求項8から11のいずれか一項に記載のテーブル。
【請求項13】
前記テーブル板は、前記トレイ載置用凹部の下側に、箸、フォーク、スプーン及びナイフの少なくとも1種類を収納するための引出タイプのカトラリー収納部を有している、請求項1から12のいずれか一項に記載のテーブル。
【請求項14】
前記テーブル板は、前記カトラリー収納部の下側に、メニューを入れるためのメニュー収納部を有している、請求項13に記載のテーブル。
【請求項15】
前記トレイ載置用凹部の底面には、文字、図形及び記号の少なくとも一つを含む表示領
域が設けられている、請求項1から14のいずれか一項に記載のテーブル。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のテーブルに用いられるトレイであって、
前記トレイ載置用凹部に載置可能に構成されたトレイ。
請求項1がむちゃ広い!そして従属項の数が多い!!
おそらく、最上位請求項のむちゃくちゃ広い発明の範囲からスタートして、各従属項の限定で徐々に発明の範囲を狭めてゆき、どこまで限定すれば進歩性が認められるか審査官に見てもらおうという作戦であると思われます。
従属請求項が15個もあればどこかで止まる(進歩性が認められる)可能性はあると思われます。
5.もう1件の特許出願(特願2018-243193)の簡単な説明
もう1件の特許出願(特願2018-243193)について簡単に説明します。
以下に図2及び要約書の記載を引用します。図2を参照しながら、要約書の記載を読んでみてください。
【課題】圧迫感を与えないような空間デザインを可能としつつ、しかも、対面した者同士が互いの視線が気にならないようにすることができるテーブル及び仕切りを提供する。
【解決手段】仕切り24を備えたテーブル20では、仕切り24が、テーブル板30を挟んで前後に向い合わせとなる者同士が互いに目が合わないように、テーブル板30から所定の高さ位置において対面者同士の空間を遮る目隠し部71と、目隠し部71の下方であってテーブル板30の上方にて対面者同士の空間を遮らないようにした開放部74と、を備える。
仕切り24に、開放感を出すための空所である開放部74と、対面した者の視線を遮る目隠し部71とが設けられています。
これにより、圧迫感を軽減しつつ、対面した者の視線が気にならないようにすることができるとのことです。
6.結語
実際に店に行って焼肉ライクの体験をしてきたのですが、安くて美味しいのはもちろんのこと、美しさと使いやすさが両立しており、これまでの焼肉店にはない感覚でした。また、
美的&機能的なデザインに投資をして他社と差別化を図り、そのデザインについて特許による保護を求める。知的財産が有効活用されていて素晴らしいなぁと思いました。
いきなりステーキの特許が話題になったことで、飲食業界等のこれまで特許出願が行われてこなかった業界で特許出願をする方が増えてきたように思われます。
このアイデアって特許になるのかしら?
という疑問をお持ちの方は、特許商標無料相談をご利用ください。
- 貴社のアイデアを特許で保護することができるのか
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をご説明&ご提案いたします。
以上、焼肉ライクの特許出願について説明いたしました。
この記事がお役に立ちましたら幸いです。